障がい者雇用・障がい者の就職には、さまざまなハードルがあることが、残念ながら現状です。
身体・発達・知的・精神などに障がいを持つ方々が、一般企業に就職することに関して、国は障害者雇用率という数値を定めてサポートしています。
しかし、実際はスムーズに就職活動を進めるために、就労移行支援や相談支援などの社会福祉サービスを受ける必要があります。
そして、障がいを持つ方々の就職とともに問題となっているのが、障がいを持つ方々の離職率です。
なぜせっかく就職した職場を辞めてしまう方が多いのでしょうか。
また企業は障害者雇用率をアップさせるために、どのような努力をしているのかをご紹介します。
障がい者雇用の離職率は障がい者・企業双方の悩み
障害者雇用率が国によって定められていることにより、障がいを持つ方々の離職率の高さは、企業にとっても大きな悩みとなっています。
もちろん障がいを持つ方々にとっても、苦労して就職した職場をすぐに離れなければならない事態が発生することは、心身、経済上大きな負担になります。
そのために国は障害者総合支援法などを改正して、障害者雇用をする企業や、働く障害を持つ方々の支援を行っています。
就労定着支援や就労移行支援も重要なサービスの一環です。
なぜ企業にとって重要な人手であるはずの障がいを持つ人々が、働き続けられなくなってしまうのかをひもとく前に、国による障害者雇用率について少し解説します。
障がい者の雇用率は国によって定められている
障がいのある方々を、一定数雇用することは、国によって定められています。
事業所の規模にもよりますが、ある程度の規模以上の企業に定められた雇用率は、現在では2.3%以上となっています。
障害者雇用率制度は平成30年に改正されている
障害者雇用率制度は、国や地方公共団体、民間企業は、障碍者雇用率が定められ、相当する人数以上の障がいを持つ方を雇用しなければならないという制度です。
近年になって注目度が高まっていますが、実はとても古い制度。
1960年に身体障害者雇用促進法という法律が制定されたときに、障害者雇用率は企業や団体の努力義務として追加されました。
その後1976年に法改正があって、障害者雇用は法的義務となります。
また障害者雇用率は、1.5%と定められたのです。
その後、障害者雇用率は幾度も法改正を繰り返し、そのたびにアップしてきました。
1988年→1.6%
1998年→1.8%
2013年→2.0%
2018年→2.2%
2021年3月→2.3%
今年2021年にも改正が行われ、2.3%に引き上げられたのです。
さらに障害者雇用率が2.2%に引き上げられた2018年(平成30年)には、障害者総合支援法に基づく障害福祉サービスに、就労定着支援も新たにスタートしました。
2021年3月以降の事業主別障害者雇用率と雇用義務のある企業
2021年3月に改正された障害者雇用率は、事業主によって割合が異なります。
・国・地方公共団体など…2.6%
・都道府県教育委員会など…2.5%
・民間企業…2.3%
民間企業では、現在従業員43.5人以上の企業で、障害者雇用義務が発生します。
障がい者の雇用については、社会的な変化を反映するために5年に1度は雇用率の見直しが行われることになっています。
また今回のように、5年を待たずして引き上げられることもあり、今後もさらなる引き上げが予定されています。
このように、障がいをお持ちの方々を雇用することは、企業にとって重要な課題なのです。
知っておきたい!障害者離職率が高い理由
それでは、なぜ障がいを持つ方の離職率が高いのか、その理由について詳しくみていきましょう。
障害者離職理由について
さまざまな障がいを持つ方が仕事を辞めてしまう、離職理由をピックアップしてみましょう。
・職場の人間関係やコミュニケーション・雰囲気
・労働条件や賃金に不満がある
・仕事の内容が心身の調子や本人の特性と合わない
・疲れやすく、体力や精神面が追い付かなくなった
・精神疾患の症状が悪化した
・作業や能率などで適応が難しい
離職理由には、健常な方と変わらないように見えるものから、障がいを持つ方独特のものもあります。
ただし、健常な方と変わらないような理由であっても、その陰に障がいを持つ方の特性が理解されていない点がネックになっているものもあるのです。
それでは、それぞれの離職理由について深く掘り下げてみます。
・職場の人間関係やコミュニケーション・雰囲気
職場の人間関係やコミュニケーション、雰囲気などが原因で、仕事を続けられなくなってしまうケースは、健常な方でもよくあることです。
健常な方の離職・転職理由の上位にも入ってくるスタンダードなもので、障がいや精神疾患・難病をお持ちの方でも同様です。
しかし、健常な方とはちょっと違った、障がいや精神疾患をお持ちの方の特性に関連したケースが多く潜んでいることは、特筆すべき点です。
例えば、障がいが発達障害だった場合、社会性やコミュニケーションの部分に「苦手」が集中している場合が多いのです。
「挨拶をする時は目を合わせる」ことが当たり前の健常者。しかし発達障害のある方にとって、それは非常に難しいミッションということもあります。
また精神疾患の中には、ミスを忘れることが難しい特性や、ものごとを前向きに捉えにくくなっている特性も存在します。
健常な方が感じることのない不穏な雰囲気を、感じ取ってしまっていることもあります。
障がいを持つ方々にとっても、健常な方々にとっても、職場の人間関係やコミュニケーション、雰囲気は働く上で非常に重要です。
しかし障がいを持つ方々の場合、健常な方とは違った感じ方や方向性で、不安や恐怖を抱いている可能性があるのです。
・労働条件や賃金に不満がある
労働条件や賃金に不満がある、という点も、健常な方と変わりません。
労働条件の部分が、障がいや精神疾患をお持ちの方の場合、健常者とは多少異なってきます。
・仕事の内容が心身の調子や本人の特性と合わない
割り当てられた仕事の内容が、障がいを持つ方の心身の調子や本人の特性と合わず、どうしても仕事がつらいというケースです。
程度は人それぞれですが、これも健常な方々にも当てはまる離職理由と言えます。
・疲れやすく、体力や精神面が追い付かなくなった
障がいや精神疾患・難病をお持ちの方には、集中することに大変な体力が必要という方もいます。
また実際に疲れやすいという難病をお持ちの方もいるので、体力は大きなポイントのひとつです。
疲れやすさは体力だけでなく、精神面も同様です。心が疲れ切ってしまうと、仕事を続けることが難しくなります。
・精神疾患の症状が悪化した
精神疾患をお持ちの方の中には、仕事場で感じるストレスをため込んだ結果、症状が悪化してしまうケースもあります。
もちろん外に出て働くことで、生きがいを感じ、症状も軽減していく方もたくさんいます。
症状が悪化するまでには、心や体が参ってしまうほどのストレスがあり、そこに本人や周囲が気付けなかったというプロセスがあると考えられます。
・作業や能率などで適応が難しい
作業の内容や、時間内にいくつ成形しなければならないといった能率の点で、職場が求めるノルマと障がいや精神疾患・難病をお持ちの方のスキルがかみ合わないというケースです。
働く側も間に合わないことやうまくできないことで自信を無くしてしまったり、重圧によるストレスが心身の状態を悪化させることにつながります。
また職場や同僚も、間に合わない、不平等といった不満を抱きやすく、双方にすれ違いが起こってしまう原因となります。
障がい・精神疾患をお持ちの方が長く働けるためのサポート【就労定着支援】
それでは、健常な方も障がいや精神疾患・難病をお持ちの方も、ともに気持ちよく働くためには、どのような支援が必要なのでしょうか。
就労移行支援における「就職後6ヶ月間のサポート」
就労移行支援では、就職後も6ヶ月間のサポートを行います。
就職した後も継続してサポートを行うことで、就職直後の不安定な時期を乗り切ることができるよう、配慮されています。
就職したからといって、障がいや精神疾患・難病をお持ちの方の悩みが無くなるわけでは当然ありません。
そこで、就労移行支援では就職した後も6ヶ月間はさまざまなサポートを行うことになっているのです。
就職をする際には、就労支援員が事前に職場を訪問し、ご利用者様の特性や得意なこと、苦手なことの記録などを参考にしながら、事前打ち合わせを行います。
さらに就労がスタートする際は、ご利用者様が希望する場合はディンクル就職支援センターの担当者が、出勤に同伴して就労スタートに付き添います。
初めての場所はとても苦手という方や、知らない人とコミュニケーションを取ることに強い緊張を覚えるという方の場合、初日の付き添いは心強いサポートになります。
また6ヶ月間はその後の就労定着にとても重要な時期と考えられているため、職場と就労支援員は、定期的に連絡を行って、通勤や仕事の状態を確認します。
もちろんご利用者様からの悩みや不安、相談などがあれば、担当者がしっかり対応していきます。
また主治医とも定期的に連絡を取り合って、仕事をスタートし、新たな職場に馴染んでいく上で、ストレスが溜まって症状に変化が起きていないかどうかなどをチェックします。
就職から6ヶ月以降の離職率が高まっている
就職から6ヶ月間は、これまで2年、3年と信頼関係を培ってきた就労移行支援の担当者・スタッフたちと二人三脚で毎日が進みます。
そのため6ヶ月間は離職率も低く、定着率が高いままのケースが多いのですが、その後が重要です。
健常な方でも、初めての職場に慣れ、さまざまな問題や困難を乗り越えて腰を据えられるまでに、3年はかかるとも言われています。
よりセンシティブな支援が必要である障がいや精神疾患・難病をお持ちの方にとって、福祉サービスが打ち切られ、支援が途絶えた後の3年間は、かなり厳しいものとなるでしょう。
実際に、就労移行支援が終了する半年を境に、障がいや精神疾患をお持ちの方の離職率がアップする傾向にあります。
そのため、新たに設置されたのが就労定着支援なのです。
就労定着支援で就職後3年半までをカバーする
就労定着支援は、就職してから就労移行支援が終了するまでの半年間に利用の準備を進め、就労移行支援が終了した就職後7ヶ月目からスタートさせる福祉サービスです。
就労移行支援同様、職場と支援担当者、関係者、医療機関が連携して、就労の継続をサポートしていきます。
就労移行支援が終わっても、職場との橋渡しをしたり、仕事に関する相談をするサポーターがいることは、とても心強いことです。
実際に就労定着支援を活用している方の離職率は低く、定着率が上がることがデータ上でも分かっています。
ただし就労定着支援は、就労移行支援や就労継続支援などの就労系福祉サービスを受けた方でなければ受けることができない原則となっています。
ディンクル就職支援センターでは「就職したい」という最初の相談からスタートし、就労移行支援を経て、就労定着支援までしっかりサポートできます。
就職したいけれど不安がある方、一歩がなかなか踏み出せずにいる方にとって、一貫してサポートができるディンクル就職支援センターはおすすめの支援事業所なのです。
ディンクル就職支援センターの就労定着支援が安定した就労をサポートします
障がいや精神疾患・難病をお持ちの方の就労は、就職だけでなく、その後いかに長く定着して働くことができるかという点が課題となってきています。
これまでは就職を後押しするための支援が中心でしたが、ひとつの職場で長く働ける環境を整えることの重要性から、就労定着支援が誕生しました。
ディンクル就職支援センターでは、特定相談支援から就労移行支援、就労定着支援まで、6年以上に及ぶ丁寧なサポートが可能です。
信頼関係を結んだスタッフたちとともに、人生を楽しめる息の長い就労を目指してみませんか。